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麻布十番。地方出身の私にとっては、それだけでなんとなく洗練された響きがある。 集う人も、そこに立地するお店もどこか「麻布」な雰囲気を醸しだしている。ややもすると近寄りがたい印象すら受けるが、路地を少し入れば実は下町的な風情も同居する親しみやすい街、麻布十番。 六本木に向けて少し歩いたところにある「田舎料理 La 田村」へと向かった。南仏プロヴァンス料理のお店とあって、日本の暑い夏にもピッタリ。奇しくも同席者はみなフランス滞在者で、家庭的なフランス料理を懐かしむ、という趣もあった。
ワインは3人で2本。最初は南仏のVDP(ヴァン・ド・ペイ)の白、シュヴァリエが輸入するドメーヌ・ド・フローリアンだ。華やかで甘い香りが南っぽくジューシーな味わいはスターターとして申し分ない。 2本目はロワールのVDP、ピノ・ノワール。造り手など詳細は失念したが、きれいな色合い、繊細な香りは上品な造りをうかがわせる、秀逸な一本。こちらもやはりシュヴァリエ輸入。 料理はまず、アサリの酒蒸しが出てきた。少し塩辛く濃い味付けで、自然とワインが進む。次にニース風サラダ。大ぶりのトマト、ツナ、玉子が豪快に盛りあわされた一品でハーヴ、オリーヴオイルでうまく締められている。太陽の恵み、夏野菜のおいしさ。
天然酵母で焼き上げたパンもなかなかのもの。しっとりと酸味もある、外はカリッと中はふんわりという、パン・ド・カンパーニュ。アサリから滲み出たスープを吸い込ませて食べると、もうとまらないおいしさ。
3品目は黒豚の田舎風テリーヌ。てっきり、お皿の真ん中にチョコッと、というのを想像していたが見事に裏切られた。豪快なアメリカンステーキのような大きさで横たわっており、その周りをキュウリ、トマト、ピクルス、アボガドの色とりどりな野菜たちが囲む。テリーヌそのものにはイチジクとマスタードが刷り込まれていて甘辛く、さっぱりとした後味で上品にまとめられている。 メインの4品目は、プロヴァンス風魚の香草焼き。おそらく金目鯛?だと思うが身が引き締まっていてほどよい塩分。ハーヴ、スパイス類の香りも複雑に溶け込んでおり、地中海の砂浜を思い出させるような磯の香りにウットリ。 どのお皿もボリュームがある家庭料理。紫蘇の葉がよく効いていてどこか和風な味付けも感じられる。共通しているのは素材の旨さが前面に出ていること。調味料はあくまで脇役であり、野菜や肉や魚の新鮮な素材が、お皿の上で飛び跳ねている。「グツグツ・トントン・コトコト。La 田村の台所は準備完了です。」と書かれたショップカードを手に、再訪を誓った。
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